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【青少年のための小説入門】あらすじ・ネタバレ、読んだ感想をレビュー

 

今回ご紹介するのは久保寺健彦著

案内人
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「青少年のための小説入門」

この小説を通してたくさんの文学に触れることができ、小説執筆の入門書ともなりうる一冊です

小説執筆の入門書として優秀なだけでなく、物語自体も緩急があり引き込まれます。

キャラクターも魅力的で、涙なしでは読めない作品です。

 

 

「青少年のための小説入門」あらすじ

主人公は成績優秀だったが受験に失敗し、学校に馴染めない中学生・入江一真と、文字の読み書きが読めない学習障害である「ディスクレシア」の素行の悪い青年・田口登。

一真が登の実家である駄菓子屋で万引きをしたことから始まる2人の物語です。

登の夢は「小説家」。その夢の片棒を一真に担いでもらおうとします。

最初は戸惑う一真ですが、登と一緒に小説の魅力に飲み込まれ、「小説家」をめざしていきます。

表現や構成力を磨き、やがて小説家として念願のデビューを果たす二人ですが、登を取り巻く環境からさまざまな困難が降りかかってきます。

一真は変わり者の不登校の少女、かすみとの恋にも葛藤します。

言葉がきつく情緒不安定ですが、嘘はつかずひたむきな「かすみ」に惹かれていきます。

しかし彼女は他人を信用できない性格。それは彼女の家庭環境にも影響しているようで……。

自分の力ではなんとかすることが難しい「家族」や「生まれ育った環境」に向き合う登やかすみと、二人を信じて相棒や恋人として隣に立ち続けたいともがく一真の唯一無二の関係を描く作品。

 

1982年4月、中学2年だった一真は、万引きを強要された現場で、ヤンキーの登(のぼる)と出会う。登は、いじめをやめさせる代わりに、「小説の朗読をして欲しい」と、一風変わった提案を一真に持ちかける。はじめは嫌々だった一真だが、たくさんの小説をふたりで読むうちに、「面白い小説を創る」という想いが加速していく。しかし、次々に壁がふたりの前に立ちはだかり……。落ちこぼれのディスレクシア(識字障害)のヤンキーといじめられっ子中学生が、小説界に殴り込み!? 小説家を目指すデコボココンビの奮闘を描く、渾身の青春長編小説。

出典:Amazon

 

「青少年のための小説入門」ネタバレ感想

これまで見たことのない、珍しい「小説バディ」ものと言ってもよいかもしれません。

全く正反対の二人を主人公に据えることで、読者は後ろ向きですが素直な一真には自身を投影することができますし、喧嘩っ早いですがカリスマ性がある登にはひきつけられるような魅力を感じるでしょう。

登が文字を読めないことから、物語中では一真がたくさんの文学作品を読み聞かせたり要点を伝えて文章力を磨くことから、読者も登と一緒に文学に触れることが可能です。

同作内では「坊ちゃん」「羅生門」などの教科書に載っているような日本の定番から、「ライ麦畑でつかまえて」「アルジャーノンに花束を」など海外の作品まで幅広く紹介。

なんとなく嫌煙していた作品の魅力も分かりやすく、新たな読書欲に火をつけられました。

そして物語も面白いのが同作のすごいところ。

内気だが賢く努力型の一真と、乱暴者だが優れた発想力を持つ登が、お互いに影響されながら代表作「ふたりの季節」を書き上げベストセラーになるのですが、そこから2人の道がどうしようもない理由で分かれていくのに歯がゆさを感じてしまうほど、物語に没頭してしまいます。

華々しいデビューとは裏腹に、小説のように円満に解決することができないこともある、「現実」も苦しいほどに色鮮やかに表現されています。

特筆すべきは最後の一文。物語すべてが伏線となったようなとんでもない一分で、涙なしでは読めないエンドです。

 

「青少年のための小説入門」見どころ

小説の「面白さ」の要素とは何か?小説と漫画との違いは?つまらない小説はなぜつまらないのか?

……など、小説を執筆している人には興味深い話題を2人の会話から展開していきます。

一真も登も圧倒的な文才を持つタイプではなく、名著と呼ばれる本を分析し、名著たる所以を考察していきます。

文学の難しい書評だと読むのを嫌がってしまうこともありますが、くだけた口調で真理をつくのに思わず納得してしまいます。

また面白い小説を書くため、名著の要素を抜き出し、別の設定で書き直してみる……など実践的な方法も多く含まれていました。

そして深く読み込むほど、全体にちりばめられている伏線や二人が抱く葛藤などが浮かび上がっていくのも魅力のひとつ。

上手くいかない家族との関係や実らない初恋、そして育ってきた環境が違う友人は道を分かつしかないのか……。

人と人との関係を真摯に描写している同作の読了後は、色々なことを考えてしまう作品でしょう。

 

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