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恩田陸【木曜組曲】小説のあらすじと感想をレビュー

 

案内人
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あなたは小説を書いたことがありますか?

もし小説を執筆した経験があるならわかると思いますが、小説家はとても面倒くさい生き物。

憧れの作家や自分の創作論を語り出すと止まらなくなり、その飽くなき情熱や業の深さにはしばしば圧倒されます。

今回はそんな女流小説家の生き様を描いた恩田陸の傑作ミステリー『木曜組曲』を紹介します

 

 

「木曜組曲」あらすじ・ネタバレ

本作のメイン登場人物は五人の女たち。彼女たちは耽美小説の巨匠・重松時子の異母姉妹や遠縁にあたります。

重松時子は数年前に謎多き死を遂げました。自殺なのか事故なのか、真相はわかっていません。

ノンフィクションライターの絵里子ほか四名は、重松時子を偲ぶため彼女が生前愛したうぐいす館に集まり、木曜日を挟んだ三日間を過ごすのを恒例行事にしていました。

何故木曜日を選んだのかというと、重松時子が一番愛した曜日だからです。

今年も気心知れた仲間が一堂に会し、時子の元担当編集者兼ライフパートナー・えい子の手厚いもてなしを受けます。

えい子の絶品手料理に舌鼓を打ちながら楽しい雑談に耽る絵里子たちですが、そこに時子の登場人物と同名の「フジシロチヒロ」から花束が届きました。

花束に添えられていたのは脅迫文ともとれる物騒なメッセージ。

これをきっかけに絵里子たちは時子が死んだ当日の記憶を辿り、事件の真相をそれぞれ推理し始めます。

意見を交わすうちに炙り出されてきたのは、全員が隠していた時子との確執や複雑な感情。さらには五人の間に張り詰めたライバル意識まで詳らかにされていきます。

はたしてこの中に時子を殺した真犯人はいるのでしょうか?

 

耽美派小説の巨匠、重松時子が薬物死を遂げてから、四年。時子に縁の深い女たちが今年もうぐいす館に集まり、彼女を偲ぶ宴が催された。ライター絵里子、流行作家尚美、純文学作家つかさ、編集者えい子、出版プロダクション経営の静子。なごやかな会話は、謎のメッセージをきっかけに、いつしか告発と告白の嵐に飲み込まれてしまう。はたして時子は、自殺か、他殺か―?気鋭が贈る、長篇心理ミステリー。

(「BOOK」データベースより)

 

「木曜組曲」感想レビュー

本作の魅力となるのは衝撃的な事件の真相以上に、キャラの立ちまくった作家たちが交わす創作論です。

うぐいす館に集まるのはそれぞれ異なるジャンルで活躍する現役の物書きたち。

日々取材に飛び回るノンフィクションライターもいればエンタメに特化したサスペンス作家、観察力が優れた純文学作家や審美眼に富んだエッセイストとよりどりみどり。

そんな彼女たちが重松時子の作品へのスタンスや自作の裏話を飲み食いしながら語るのが非常に面白いです。

えい子が手がける料理の描写も大変おいしそうでお腹がすくこと間違いなし!絶対にポトフが食べたくなります。私は本作を読んで緑茶とチーズケーキのコラボレーションを試みました。

恩田陸曰く特に個々のモデルはいないそうですが、「このキャラはあの作家っぽいな」と妄想を膨らましながら読むのも一興です。

読み専が読んでももちろん面白いですが、一度でも小説を書いたことがあるなら共感の度合いがいや増します。

一癖も二癖もあるしたたかな女たちが好きなら必ず満足できる、贅沢なミステリーです。

 

木曜組曲の見どころ

本作は篠原哲雄監督により映画化されており、そちらも大変面白い作品に仕上がっています。

鈴木京香をはじめとする実力派女優たちの饒舌な演技は必見です。あえて分類するならミステリー小説なのでしょうが、ヒューマンドラマとしても読みごたえたっぷり。

作家たちが普段何を考えながら物を書いているか、その苦悩や日常がリアリティを伴って描写され目を開かれる思いです。少々風変わりな群像劇が好きなら絶対に読んでほしいです。

登場人物の誰に共感するかも読者の性格や立場によって違ってくるので、読後に感想を話し合うことで新たな発見があるかもしれません。

恩田陸は「開かれた結末」に特徴があり、事件の真相がわかった後にもあっと驚くどんでん返しが待ち受けています。

スタート時点で時子は故人ですが、作中でやたらと人が死んだり殺されたりしないのも安心して読めますね。

絵里子たちが話す次回作の構想も、本好きなら聞いてるだけでわくわくしてきます。

ラストは爽やかな終わり方で、時子の死に縛られていた登場人物たちが一歩を踏み出す姿を応援したくなりました。

 

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