美食を求める人間の飽くなき探求心は素晴らしい料理の数々を生み出してきました
しかし欲が行き過ぎると悲劇を生むのが皮肉な世のならいです。
今回はドラマ化もされた東村アキコの人気漫画
「美食探偵」をご紹介します。
「美食探偵」あらすじ
主人公・明智五郎は美意識の高い私立探偵。東京表参道に小さな探偵事務所を構え、日々依頼人を待ち受けています。
実は財閥の御曹司でグルメとして知られる明智ですが、小林苺がワゴン販売する弁当屋「イチゴデリ」の弁当を好んで食べるなど、意外と庶民的な面も併せ持っていました。
ある日明智は大人しそうな婦人から夫の浮気調査を請け負います。
尾行の結果夫が若い女の部屋に通っていることが判明。その事実を告げた翌日、依頼人が夫を殺害する事件が発生。
夫婦仲が冷えきっていた夫を殺した事で吹っ切れた依頼人は以降マグダラのマリアと名乗り、あの手この手で増やした信者に殺人を犯させ明智を翻弄します。
食にまつわる探偵奇譚！ 事件のカゲには食があり食の裏にはナゾがある… 名探偵・明智五郎の華麗なる推理劇、幕開け！ 読切版「美食探偵」も収録！
出典：Amazon
著者 東村 アキコ 出版社 集英社 発売日 2016年2月25日
「美食探偵」登場人物
【明智五郎】 東京表参道に探偵事務所を構える私立探偵。大財閥の御曹司でセレブな美食家です。
【小林苺】 「イチゴデリ」と名付けたワゴンでお手製の弁当を販売する女性。明智の助手に任命されることが多いです。
【マグダラのマリア】 第一話で明智の事務所を訪れた依頼人。明智の運命の女です。
「美食探偵」ネタバレ感想
東村アキコ「美食探偵」は中村倫也主演でドラマ化もされたグルメミステリー。
主人公の明智はなかなかエキセントリックな人物で、美食に独自のこだわりを持っています。
おいしい料理を食べる為なら骨身を惜しまず東奔西走し、ネットの口コミなどの風評には惑わされず、常に自分の舌で真価を判断するのですから美食に賭ける情熱が伝わりますね。
一方では自らの失策で希代の殺人鬼を生み出してしまった、大きな十字架を背負っています。
第一話で依頼人として訪れた女性が犯人になり、のちの黒幕にして運命の女となるのは斬新な展開。
マグダラのマリアは明智の好敵手として度々姿を現し、各エピソードの裏で暗躍します。
二人の関係の推移や苺との三角関係も本作の見所で、ドラマチックな恋愛模様から目が離せません。
もちろん和洋中とバリエイションに富むグルメ描写も、本作の魅力の片翼を担っています。
美食にこだわりこそありますが原則料理に貴賤をもうけず、誰がどこで作ろうかうまいものはうまいと断言する明智。
「イチゴデリ」に毎昼通うのも、料理人としての苺の腕前を評価しているからに他なりません。
自分の舌に絶対の自信を持った彼の姿は清々しいほどで、どんな尊大な態度も許せてしまいそうです。
さらに注目してほしいのは毎回登場する犯人たちの動機。
DV、モラハラ、地下アイドルのストーカー、口コミサイトの捏造レビュー……彼らが犯行に至った背景には、現代社会の病理ともいえる様々な問題が絡んでいます。
ささいなすれ違いが誤解を招いて破滅に繋がる、一歩間違えばあちら側にいたのは自分だったかもしれない……そんなふうに読者をヒヤリとさせる圧倒的なリアリティが本作の完成度を高めていました。
事件のトリックに食材や調味料を絡める発想も秀逸で、グルメミステリーのキャッチフレーズに恥じない仕上がりです。
セレブでイケメン、一見完璧な明智の世間知らずなポンコツぶりをフォローする苺とのコンビも最高でした。
塩と砂糖が互いを引き立て合うように、シリアスとギャグが絶妙な比率で入っています。
明智が食事シーンで繰り広げる饒舌な蘊蓄も面白く、笑いながら新しい知識を身に付けることができました。
マグダラのマリアに洗脳された元一般人たちの行く末も、犯行前から彼等を知っている身としてハラハラドキドキ見守りたくなります。
はたして明智はマグダラのマリアに引導を渡すことができるのか、気になる結末は皆さん自身で見届けてください。
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