あらゆるジャンルを網羅しているBL。しかし民俗学とホラーの組み合わせは意外とありませんでした
モクモクれん「光が死んだ夏」は、そんな数少ない民俗ホラーBLの傑作として連載スタート時から話題を呼んでいます。
今回はモクモクれん「光が死んだ夏」をご紹介します
「光が死んだ夏」あらすじ
舞台は田舎の村。高校生のよしきには小さい頃から仲が良い親友・光がいました。
光はふざけるのが大好きなお調子者で、しょっちゅうよしきをからかって遊んでいます。
そんな光がある日突然失踪、一週間も姿を見せませんでした。村の裏山に消えたそうですが詳しくはわかりません。
一週間後……再びよしきの前に現れた光の中身は別物になっていました。
よしきは光が既に死んでいると見抜いたものの、断ち切りがたい未練から親友の皮を被ったばけものを受け入れます。
たとえ中身が違っても、見た目と性格を模倣した「それ」の存在を否定できないよしき。
一方よしきたちが住む村の隣町では、光が山を下りてきたのと前後して不審な事件が相次いでいました。
ある集落で暮らす少年、よしきと光。同い年の2人はずっと一緒に育ってきた。
しかしある日、よしきが光だと思っていたものは別のナニカにすり替わっていたことに確信を持ってしまう。それでも、一緒にいたい。友人の姿をしたナニカとの、いつも通りの日々が始まる。時を同じくして、集落では様々な事件が起こっていき――。新進気鋭の作家・モクモクれんが描く、未知のナニカへ堕ちていく物語、開幕。出典:Amazon
著者 モクモクれん 出版社 KADOKAWA 発売日 2022年3月4日
「光が死んだ夏」登場人物
【よしき】 本作の主人公で高校生。ややクールで達観した性格です。幼馴染で親友の光に、友情以上の複雑な感情を秘めていました。
【光】 よしきの幼馴染で親友。陽気なお調子者です。裏山に一週間姿を消し、帰ってきたら何かに乗っ取られていました。本人は既に死亡しているそうです。
「光が死んだ夏」ネタバレ感想
モクモクれん「光が死んだ夏」はホラーとBLの異色の組み合わせで話題沸騰しました。
まず第一話の冒頭時点で光が死んでいる事実が明かされます。
さらには光の体は何者かに乗っ取られて、その何かが生前の光の言動を模倣しているのがわかりました。
しかし光の死亡に気付いているのは主人公のよしきだけ。光は「お願いだから黙っていてくれ」とよしきに懇願し、口外したら命はないと脅します。
そして二人の奇妙な関係が始まるのですが、じわじわと不気味さを盛り上げる演出が上手くてのめりこんでしまいました。
たとえば擬音。
本作の擬音は活字で表現されるのですが、その無機質さが時間のゆったり流れる田舎の風景と実にちぐはぐで、絶妙な違和感を醸しだしています。
学校へ行って勉強し、一緒に登下校してたまに寄り道もするよしきと光の平和な日常に忍び寄る不穏な気配と、異物に浸蝕されていく恐怖を肌で感じました。
現状光の正体には言及されていませんが、「ノウヌキ様」「地獄そのもの」と気になるワードが散りばめられており、先の展開が気になってたまりません。
既に町では光に詰め寄った老婆の変死体が発見され、村全体を巻き込む大惨事が待ち受けている予感がします。
BL要素に関しては控えめ。言われなければすぐ気付かないほど淡い描写にとどまっているので、BLに苦手意識がある方も安心して読めるのではないでしょうか。
特筆すべきは昔ながらの田舎の情景描写で、自然豊かな山やだだっ広い田んぼ、どこかノスタルジックな趣の校舎を目で追っているだけで郷愁に浸れます。
だからこそ不意打ちで差し込まれるホラー描写のショックは大きく、光の内に潜む「何か」があふれだした瞬間には鳥肌が立ちました。
よしきは光の秘密を守り通せるのか、破ってしまったらどうなるのか。
思春期特有の情動を持て余し、危うい緊張を孕んだ関係はジェンガさながら……あるいは表面張力に守られたコップさながら、いずれ弾け散るのは不可避。
生前の記憶に影響された光はよしきに依存し、よしきも親友の姿をしたばけものを突き放せず、心中でもするかのように深みにはまっていくので目が離せません。
タイトルの「光が死んだ夏」はダブルミーニング。
登場人物の光の死亡をさすのは言うに及ばず、閉塞感あふれる田舎で暮らすよしきにとって、唯一の希望の光が死んだ事も表現しています。
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