月9のドラマも好調だった「ミステリと言う勿れ」
原作は「BASARA」「7SEEDS」など、数々の名作を世に送り出してきた田村由美の漫画です。
今回は読者の価値観をアップデートしてくれる
「ミステリと言う勿れ」をご紹介します。
「ミステリと言う勿れ」あらすじ
大学生・久能整はカレー作りが趣味の一人暮らしの青年。
ある日アパートの近所で殺人事件が発生、整が重要参考人として警察署に連行されます。
被害者は整と同じ大学の学生ですが、それほど親しい間柄ではありません。
取調室で執り行われる事情聴取の最中、整は持ち前の観察力と独り言に見せかけた持論で、刑事たちそれぞれが抱える悩みやコンプレックスを暴いていきます。
整の指摘により各々が抱いていた偏見、ならびに先入観への反省を促される刑事たち。
そうこうするうちに新たな事実が発覚し、意外な真犯人の正体が明らかになるのでした。
冬のある、カレー日和。アパートの部屋で大学生・整がタマネギをザク切りしていると・・・警察官がやってきて・・・!?突然任意同行された整に、近隣で起こった殺人事件の容疑がかけられる。しかもその被害者は、整の同級生で・・・。次々に容疑を裏付ける証拠を突きつけられた整はいったいどうなる・・・???新感覚ストーリー「ミステリと言う勿れ」、注目の第一巻です!!
出典:Amazon
著者 田村 由美 出版社 小学館 発売日 2018年1月10日
「ミステリと言う勿れ」登場人物
【久能整】 天然パーマが特徴的な大学生。日常のよしなごとに違和感を覚えるたび、周囲の目を気にせず持論を展開する癖があります。
【犬堂我路】 バスジャック事件の際に整と同じバスに乗り合わせた美青年。
【ライカ】 整が病院で知り合った謎の女性。長期入院している患者です。
「ミステリと言う勿れ」ネタバレ感想
本作「ミステリと言う勿れ」は整の屁理屈を堪能する漫画です。
……などと断言してしまうと語弊があるかもしれませんが、私たちが常識だと思い込んでいた事柄が「僕は常々疑問に思っているんですが」の前置きで覆され、全く別の世界が見えてくるのは実に新鮮。
整の柔軟な発想や自由な考え方は、「〇〇ならこうあるべし」と正論を押し付けてくる現代社会に苦しむ人々を救ってくれます。
認知症患者の徘徊を嘆くヤングケアラーには「徘徊したいなら好きなだけさせてあげたらいいじゃないですか」とアドバイスし、Eスポーツで稼ぎたいと夢見るひきこもりの孫に悩む老人には「外で働くのだけが全てじゃない、ひきこもりも個性のうち」と答える整。
それぞれ向き不向きがあるように、要は適材適所なのだと説く考え方は、他者を否定しない受容性に溢れています。
中でも感銘を受けたのは「妻が死んだのは自分の悪事の報いを受けたから」と独白する男への返し。
「奥さんはあなたのおまけでもなんでもないんですから、ただ自分の人生をまっとうして死んだんです」。
この一言にはハッとしました。
言われてみれば当たり前なのに、言われなければ気付けない事がこの世にはなんて多いのでしょうか。
読者によってはただ屁理屈をこねているだけ、説教臭くて鼻持ちならないと思われるかもしれません。
しかし「こんな考え方もあるんだよ」と提示される事で、ほんの少し生きるのが楽になる人は大勢います。
事件は核心部分で児童虐待を扱っているものが多く、その手のテーマに耐性がないと若干鬱になるかもしれません。
これは整が過去の経験から小学校教師をめざしているのと関係あります。
巻き込まれ型主人公の常として、観察力と推理力を除いたらほぼ役に立たない整。
ですが彼と出会いアドバイスを得た事で、登場人物たちはほんの少し前向きになり、「人生は変えられるかもしれない」と希望を持ちます。
後味悪い事件を扱っても不思議と読後感が爽やかなのは、そんなキャラクターたちのエピローグが描写されるからでしょうか。
後半にいくと整が他者に諭され反省する場面も増えてくるので、公平性は保たれています。
個人的には整が完全でも完璧でもないとわかり、格段に親しみが増しました。
漫画で語られる蘊蓄や雑学が大好物な読者には、自信をもっておすすめできる作品。
十二星座にちなんだ殺人者たちの動向や黒幕の正体など、先を読ませない展開がサスペンスを盛り上げてページをめくる手が止まりません。
単行本の巻数もまだ少なめなので、ぜひ一気読みで追い付いてください。
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