大人になると学生時代の思い出が殊更に眩しく思い出されたりしますよね
同じ制服を着て同じ場所に数年間通う若者たちだからこそ、一瞬のきらめきが尊いほど眩しかったりします。
今回は夢や部活、そして恋愛に必死に向き合う学生や若者たちの姿が眩しい
青春小説12選をご紹介します。
青春が眩しい小説おすすめ12選
時をかける少女
(筒井康隆/鶴書房盛光社)
2006年に細田守監督の手によってアニメ映画化され大ヒットした「時をかける少女」。原作は小説だとご存じでしょうか。
時間を自由にさかのぼれる能力を身に着けた、中学3年生の主人公・芳山和子。映画では恋愛要素が強かったですが、小説では推理要素やサスペンス的な要素もあります。
もちろん小説でも主人公と彼女を取り巻く同級生との恋愛模様が描かれますが、映画とは違い控えめな性格の和子の健気さや、切ない別れに心が締め付けられます。発刊から50年以上経ちますが、今でも色あせない不朽の名作と言えるでしょう。
バッテリー
(あさのあつこ/教育画劇 角川書店)
青春小説といったら「あさのあつこ」。多くのヒット作をだすあさのあつこの代表作である「バッテリー」は、天才肌のピッチャー・原田巧と彼の才能にほれ込む素朴なキャッチャー・永倉豪の関係を中心に描く野球漫画です。
舞台は岡山で、巧が都会から引っ越してきた所から始まります。誰もが認めるような野球の才能がありますが、ぶっきらぼうで人を拒絶する巧の心を豪が解かし、本当の「バッテリー」になっていきます。上級生からのいじめや仲間同士でも感じる格差に葛藤しながらも立ち向かう姿は落涙もの。
THE MANZAI
(あさのあつこ/岩崎書店)
あさのあつこの代表作といえば上記の「バッテリー」が有名ですが、その陰に隠れるようにして超名作として名高いのが「THE MANZAI」。表題通り「漫才」がテーマです。
主人公の瀬田歩は普通から外れることをトラウマレベルに恐れていますが、転校した先で人気者の秋本貴史に「付き合ってくれ」と声をかけられます。実際は漫才コンビを組もうという意味ですが、歩はおおいに気が動転。
目立ちたくないが故にお付き合いも漫才も断りますが、笑いの力が周囲の人もそして自分自身の心も解していくのに気付き、やがて「舞台」に経つまでを描きます。「漫才」をテーマにしているからこそ、テンポよく思わず声を上げて笑ってしまうようなワードセンスの良い会話で溢れています。
桐島、部活やめるってよ
(朝井リョウ/集英社)
現在、大人気作家となった朝井リョウの衝撃のデビュー作。早稲田大学の在学中に第22回小説すばる新人賞を受賞したデビュー作を受賞した同作は、2012年には映画化され評判を呼びました。
この作品のもっとも特徴的なところはタイトルに入っている「桐島」が主人公ではない所。それどころか彼は名前以外、作品内に一切登場しないのです。
「バレー部のキャプテンである桐島が部活をやめる」という校内に降って沸いた噂話を耳にした5人の生徒たち。彼らはそれぞれ人知れず悩みを抱えていて、桐島が部活をやめるということに抱く感情や心理を密に描いています。
風が強く吹いている
(三浦しをん/新潮社)
2018年にはテレビアニメ化された同作。テーマは「駅伝」。ですが、見たことない斬新な設定で強いキャラクター達が本気で「駅伝」をめざす様に度肝を抜かれ、なおかつ爽快さを感じる作品です。
暴力事件によって部活をやめた蔵原走と、穏やかな人柄だが駅伝に固執する清瀬灰二が出会ったことから始まります。蔵原は自身が起こした暴力事件によって部活をやめさせられてしまい、その鬱憤を万引きで晴らしていました。
かつて「天才」と呼ばれた蔵原のその走りを見た清瀬はすっかりほれ込んでしまい、半ばだますように仲間へと引き入れます。しかし清瀬が集めたメンバーはオタク、運動経験のない黒人、ヘビースモーカーな25歳などとんちきな人ばかりですが、このたった10人で駅伝を本気でめざすというストーリーです。
夜は短し歩けよ乙女
(森見登美彦/角川書店)
映画化、舞台化もされた森見登美彦の初期の大ヒット青春小説。ポップで変わった文体で人気の高い森見登美彦の魅力があますことなく詰まった一冊です。
主人公のぱっとしない大学生は後輩である「黒髪の乙女」に思いを寄せ、何とか彼女とお近づきになりたいとさまざまな策を講じますがことごとく失敗……。
彼を取り巻く奇抜な人々やまるで時代が飛んでしまったかのように、くるくると変わる場面などの不思議な雰囲気が大きな魅力です。青春とファンタジーの間、というより「いい所どり」が楽しめる小説です。描写される「京都っぽい」街並みもよいものです。
鴨川ホルモー
(万城目学/KADOKAWA)
こちらも上記の森見登美彦に負けず劣らず、独特の世界観を持つ~の青春小説。加えて鴨川ホルモーも京都を舞台にしています。「ホルモン」ではなく「ホルモー」というのも大事なキーワードです。
主人公の世にも華美な女(鼻)へのひとめぼれから始まる恋愛模様など甘酸っぱい話もあれば、ファンタジーあふれる部分も……。しかし一貫して若者の心地よいくらいの無鉄砲さやまっすぐさ、青春の青臭さを感じられます。文章自体も面白く、思わずにやにやと笑ってしまうので公衆の面前では読まない方がいいかもです。
DIVE!!
(森絵都/講談社)
こちらは「飛び込み」をテーマにしたスポ根・青春小説です。
経営難により今にもつぶれる危機に瀕しているミズキダイビングクラブの新コーチが掲げたのは、「次の年にミズキダイビングクラブからオリンピックの日本代表を輩出する」ことを掲げます。
これにより主人公の坂井知季や、クラブで一番の天才・富士谷要一、幻の高校生ダイバーと呼ばれる沖津飛沫などは、オリンピックをめざして実力を磨いていくことになります。特に飛び込み選手としては平凡だった知季が、めざましく活躍していくさまは見ていて爽快です。ライバルとして知季と並び立つ富士谷や沖津のキャラクターもよく、みんな応援したくなります。
動物学科空手道部1年高田トモ!
(片山優子/双葉文庫)
発刊当時・幻影の獣医学生だった片山優子が描く「動物学科」を舞台とした青春小説です。動物にかかわる仕事がしたいと決意して入学した主人公・トモ。おしゃれや恋愛など「女らしさ」を捨てて、全力で動物の世話に取り組みながら、空手部に入部して練習にも全力で取り組む日々。
トラウマや「自分らしくあることの難しさ、大切さ」についてトモが本気で悩み乗り越えていくさまに勇気づけられます。
昆虫部
(椙本孝思/幻冬舎)
「毎日がつまらない、楽しくない」……と無気力で学校生活を送る颯太郎。いじめられているわけではないのですが、学校では孤立してしまっています。そんな灰色の生活を送っていた颯太郎は美少女の蛍に誘われて、校内一マイナーな「昆虫部」に入部してしまいます。
知れば知るほど深い昆虫の世界。次第に昆虫に夢中になり、仲間との絆を深めていきます。恋愛、友情要素はもちろん、「昆虫」に熱中する青春があってもいいよなあと思わされます。
スタートライン
(喜多川泰/ディスカヴァー・トゥエンティワン)
「スタートラインに立つのに遅すぎることはない」……。この小説を通して一貫して伝えたいメッセージはこれでしょう。
舞台は田舎のとある島。転校生の長森真苗と、彼女に恋をしてしまう伊福大祐の関係や恋を中心に描きます。ですがその奥にあるのは「何者になれるのか、もしくは何者にもなれないのではないか」という若者たちの不安を打ち消し、可能性やまだ未知数の価値を示唆するような作品です。
進路に悩む学生に読んでほしい、とも思いますが、大人が読んでも自分のこれまでの人生とこれからの人生を考えるよい契機となるでしょう。
涼宮ハルヒの憂鬱
(谷川流/角川書店)
大人気ライトノベル作品。SFの要素も大きいが、学園で主人公涼宮ハルヒのわがままに振り回されるさまは「青春」であると言えるでしょう。
小説内では常識人である立ち位置のキョンの語りで進みます。涼宮ハルヒが自分が学園生活を楽しむために学校非公式組織・SOS団を結成します。
そこへさまざまな秘密を持ったキャラクターである長門や、朝比奈、小泉など…どんどんと強すぎる人物も加盟してきます。「非日常系青春」を楽しみたいなら、涼宮ハルヒの憂鬱シリーズがおススメです。
その他定番の青春小説
砂漠
島はぼくらと
君の膵臓をたべたい
夜のピクニック
カラフル
春や春
おわりに
以上、青春小説おすすめ12選をご紹介しました。
学生の方は本を読んで主人公に励まされ、大人の方は青春を思い出す甘酸っぱい気持ちでエネルギーチャージしてみてはいかがでしょうか。