ミステリー小説で絶妙のコンビネーションを発揮する探偵と助手のコンビは、読者の心を掴んで離しません
公私ともに付き合いがある間柄ならなおさら妄想がはかどりますよね。
今回は有栖川有栖が生み出した名探偵、火村英生のデビュー作
「46番目の密室」をご紹介します。
「46番目の密室」あらすじ
ある年のクリスマス、45にも及ぶ密室トリックを発表してきた推理小説界の巨匠・真壁聖一が別荘でパーティーを開きます。
懇意な間柄の作家や編集者が招待されたこの席上に、推理作家・有栖川有栖とその親友・火村英生の姿もありました。
二人は学生時代から十数年に及ぶ親友同士。火村は英都大学の最年少准教授を務める一方、事件現場に出向いて推理をする臨床犯罪学者としても活躍しています。
パーティーは和やかな雰囲気で進行しますが、真壁が突然の絶筆宣言をした事による不穏な方向へ。
数時間後、真壁は書斎の暖炉に上半身を突っ込んで死んでいる所を発見されます。
一体誰が密室の巨匠を殺害したのでしょうか？名探偵・火村と助手・アリスは捜査を始めます。
45の密室トリックを発表、日本のディクスン・カーと呼ばれる真壁聖一が殺された。密室と化した地下の書庫の暖炉に上半身を押しこまれた上、火をかけられるという無惨な姿であった。彼は自ら考え出した46番目の密室トリックで殺された。推理作家、有栖川有栖と気鋭の“臨床犯罪学者”火村英生の痛快コンビ誕生。
（「BOOK」データベースより）
著者 有栖川有栖 出版社 講談社 発売日 2009年8月12日
「46番目の密室」ネタバレ感想
有栖川有栖「46番目の密室」は本格ミステリー小説にして記念すべき火村英生のデビュー作。
登場以来女性を中心に絶大な支持を獲得し、数年前には待望の実写ドラマ化も果たしています。
火村英生は日本どころか世界唯一の臨床犯罪学者であり、直接事件現場に出向いてフィールドワークする事を信条としています。
そんな彼が偶然事件に巻き込まれ、その場に居合わせたアリスを助手に捜査する一作目は、ロジック重視の推理と見事な伏線回収が楽しめる傑作に仕上がりました。
ストーリーもさることながら、本作で最も注目してほしいのは火村とアリスの夫婦漫才。
アラサー推理作家と准教授のコンビは実は付き合ってるのでは？と邪推したくなるほど息ぴったりで、有栖のトンチンカンな迷推理にツッコミを入れる、火村先生の毒舌が冴え渡っていました。
ともすればシリアスになりがちなストーリーを火村とアリスのコントめいたやりとりが緩和してくれるので、ミステリー初心者でも飽きずに最後まで楽しめます。
密室トリックの真相や真犯人の正体も、まるで予想しなかったので驚きました。
「46番目の密室」見どころ
火村英生の魅力を語り始めると長くなるのですが、本作を読めばそのクールな素振りと昔馴染みのアリスへの塩対応、犯罪に対してとことんストイックに徹する姿勢に惚れこむこと間違いありません。
冬の別荘で起きた殺人事件を扱っているので、クローズドサークル的な楽しみもできます。
フィールドワークと称して関係者に聞き込みをする火村の捜査手法と、それに振り回されるアリスの姿からは目が離せません。
アリスもアリスでぽろっとこぼした独り言がヒントとなり、火村を正解に導くあたり非常に相性抜群といえます。
事件の真相は作家の業を感じさせるもので、少々苦い余韻を残しました。
しかし火村とアリスの語らいが後味悪さを和らげているので、続きも絶対読みたくなります。
本作でデビューした火村とアリスのコンビは既に二十年以上続いており、今日でも全く人気が衰えていません。
「46番目の密室」がいかに完成度の高い本格ミステリーであり、火村とアリスのコンビが読者を夢中にさせているか、この事実からもおわかりいただけるのではないでしょうか。
犯罪を研究する理由を問われた際「自分も人を殺したいと思ったことがあるから」と語る火村の一貫したスタンスを学ぶ上で、あるいは作家・有栖川有栖の実力を知る上で避けて通れない傑作。
ドラマや漫画で知った人もぜひ原作を読んでください、火村とアリスの仲良しぶりにはニヤニヤが止まらなくなります。
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