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高橋ツトム【残響】漫画あらすじ・ネタバレ、読んだ感想をレビュー

 

極道、殺し屋、掃除人……裏社会で暗躍するアウトローのピカレスクな生き様には、恐ろしさと同時に憧れを感じますよね

今回は元ヤクザの老人から銃を奪い逃亡した天涯孤独の少年の旅路

案内人
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高橋ツトム「残響」をご紹介します

 

 

「残響」あらすじ

主人公は不景気なドヤ街で暮らす天涯孤独の少年・智。

安アパートで独り暮らしをする彼の隣室には、寝たきりの老人・瀬川が住んでいます。

ある日智は瀕死の瀬川に呼び出され、「五百万円やるから俺を殺してくれ」と懇願されました。

なんと瀬川は元ヤクザで、自分が殺した極道の忘れ形見に香典を渡してほしいと頼んできたのです。

最初は戸惑ったものの、瀬川が隠し持っていた銃を渡された智は勢い余って発砲してしまいました。

瀬川の殺害後智はアパートを飛び出し、彼に託された使命を果たす旅をします。

 

とある工場町で、漫然と日々を過ごす智(さとる)。彼が暮らす安アパートの隣室には、元ヤクザの老人、瀬川が住んでいた。ある日、瀬川は智に「500万渡すから、自分を殺してくれ」という依頼を受ける。躊躇する智だったが、瀬川から、智の中に巣喰う狂気を見抜かれ、彼自身の心にも変化があらわれはじめ…!?人間の心の闇と、生き方を問う、超実力派作家、高橋ツトムが挑む新境地、青春逃走物語!!

出典:Amazon

 

「残響」登場人物

【智】 ドヤ街で暮らす天涯孤独の少年。人生に夢や希望を持たず、冷めた性格をしています。

【瀬川】 智の隣の部屋に住んでいた病気の老人。実は元ヤクザで、自分が殺害した極道の遺児に香典を渡してほしいと智に頼みます。

【大悟】 瀬川の香典の受取人で女装の美少年。極道の父親を亡くしてから、父の舎弟の愛人にされてきました。

【魅也】 大悟の姉の息子。薬物中毒の母親に育児放棄されていました。

 

「残響」ネタバレ感想

高橋ツトムはストイックな絵作りとハードなストーリー展開に定評がある漫画家。

代表作は他にドラマ化もされた「スカイハイ」、孤高の刑事を描いた「地雷針」などがあります。

本作は孤独な少年・智がやむをえず殺人を犯し、逃避行を繰り広げる話。

旅の最中、智はヤクザに囚われた美少年・大悟を助け出します。

やがて二人は体の関係を持ち、大吾の甥でまだ幼い魅也も交え、疑似家族の絆を育んでいきました。

バイオレンス描写が苦手な方にはおすすめできませんが、どうあがいても裏社会でしか生きられない少年の悲壮な覚悟を描ききった、非常に読みごたえがある漫画です。

最初は何も持たず誰もいなかった智が、大悟と出会った事で生まれて初めて心を許せる理解者を得、魅也を育てる責任を負い成長していく様子は心に響きました。

一方で人間の醜悪な面も余す所なく描かれており、大悟を囲っていた極道や、保険金殺人を企む夫婦の下劣極まる言動には生理的嫌悪を催しました。

物語中盤で大悟が非業の最期を遂げた後は、智と魅也ふたりきりの逃避行が始まります。

大悟の忘れ形見でもある魅也を託された智が、美しく逞しく裏社会を生き抜いていく姿には惚れ直すことうけあい。

全三巻と短くまとまっているにもかかわらず、読後の余韻は全二十巻の長編と比べても遜色ありません。むしろ無駄を削ぎ落とした事で、より骨太な密度が高まっていました。

作中にて智は数々の壮絶な体験をし、せっかく得た心の支えすら失いました。

そこで終わらず再び立ち上がることができたのは、守るべき存在がいればこそ。

物語の後半、智は魅也を養うため女装してオカマバーで働き出しました。

皮肉にも大悟と同じ立場になったわけですが、そこに男を捨てた卑屈さは微塵もなく、吹っ切れた美しさを感じました。

ラスト、智は魅也を守る為にある決断を下します。

彼の最期を見届けた読者の胸を占めるのは、圧倒的な虚無感と極上のカタルシスではないでしょうか。

暗くて陰鬱な物語なのは否めませんが、何者でもなかった少年が血の繋がらない家族を手に入れ、立派な「男」として成長を遂げる一部始終を目に焼き付けた私は涙が止まりませんでした。

衝撃のラストを目の当たりにした読者の多くは、大悟と智の遺志を継いだ魅也もまた、一人前の男になると信じるはずです。

面白い漫画をさがしてる方に自信をもっておすすめしたい傑作でした。

 

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