日々新しい命が産まれる産婦人科。片や日の目を見れず摘まれる命もあり、幸も不幸もとりまぜて数々の人生が交差する場所といえます。しかしその実態は案外知らない人が多いのではないでしょうか。
様々な事情を抱えて産婦人科を受診する妊婦たち。
出産を決断するもの、堕胎を選択するもの……彼女たちは一体どんな人生を生きて、この場所に至ったのでしょうか？
今回はNHKのドラマも話題になった沖田×華の漫画
「透明なゆりかご 産婦人科医院 看護師見習い日記」を紹介します
「透明なゆりかご〜産婦人科医院 看護師見習い日記〜」あらすじ
主人公の沖田×華は高校の看護科に通っています。
彼女は発達障害のせいかコミュニケーションが不得手で、親や周囲との意思疎通に悩んでいました。
そんな×華は母の勧めで産婦人科でアルバイトすることになりますが初日からトラブル続きで、本当に自分に務まるのかと不安になります。
×華が働く産婦人科には様々な問題を抱えた妊婦がやってきます。
レイプやDV、性虐待によって望まぬ妊娠をした女性の他にも奔放な性交渉によって妊娠した女性たちがやってきて堕胎を頼む、×華はその現実をなかなか受け入れられませんでした。
しかし見習い看護師として彼女たちと接する中でそれぞれの事情を知っていき、考えを改めます。
迷える妊婦を支え導き、新しい命の誕生を手助けするうちに、×華もまた痛みを知る看護師として成長していくのでした。
看護学科の高校3年生の×華（ばっか）は母親のすすめで産婦人科医院の見習い看護師として働くことになる。中絶の現場やその後処置を体験して一時は辞めそうになるが、出産の現場に立ち会い、生まれる命の力強さに感動し、仕事を続けていく決意をする。「多くの人に教えたい、読んでほしい」回を追うごとに読者からの反響が大きくなっていった感動作、いよいよコミックスで登場！
出典：Amazon
著者 沖田×華 出版社 講談社 発売日 2015年6月19日
「透明なゆりかご〜産婦人科医院 看護師見習い日記〜」登場人物
【沖田×華】高校の看護科の学生。母の勧めで産婦人科のアルバイトを始めます。真面目で一生懸命ですが少々ドジ。
【×華の母親】 娘との距離感に悩みながらも×華を優しく見守ります。
「透明なゆりかご〜産婦人科医院 看護師見習い日記〜」ネタバレ感想
本作は沖田×華の実体験を下敷きにした作品。NHKで放映されたドラマは非常に高い評価を得ました。
「透明なゆりかご 産婦人科医院 看護師見習い日記」は妊娠・中絶問題に正面から向き合った漫画です。
新生児や胎児の病気や障害、産後鬱や育児ノイローゼなども取り扱っており、子どもを産み育てることの大変さや、親として果たすべき責任の重さを改めて考えさせられました。
「日本で最も多い死因は中絶だ」。これは作中に登場する産婦人科医の言葉です。
日本の中絶件数を考えると暗澹たる思いに駆られますが、その選択をせざるをえなかった人々の苦悩を掘り下げることで、単純な善悪や是非の話で片付けられない現状が見えてきます。
透明なゆりかごとは中絶した胎児を入れる試験管の事。
これを×華はゆりかごと比喩し、自我が芽生える前に摘まれてしまった子どもたちの幸せな来世を祈ります。
×華で出会った妊婦には虐待サバイバーが大勢存在します。
彼女たちの多くは愛情や安心と無縁の家庭で育ち、寂しさや承認欲を埋め合わせる為に異性に体を許す一方で、自分が親になる事を想像できずにいました。
普通を知らないから普通の親になる自信がないと彼女たちは嘆きます。
しかし妊娠や受診、あるいは×華との対話がきっかけで心境が変化し、徐々に自己肯定感を取り戻していきます。
話が話なのでしんどい描写もたくさんあり、直視するのが辛くなるかもしれません。
ですが本作を読むことで多様な価値観が身に付き、本当に他者を許して受け入れるとはどういうことかが少しだけわかります。
産婦人科の実情も詳らかにされているので、自分や自分の周囲の人間が同じケースに陥った際どうすればいいかも学べました。
妊婦をサポートするパートナーの大事さも説かれているので、男性にもぜひ読んでほしいです。妊娠や出産がけっして女性だけの問題ではないと理解できるのではないでしょうか。
生と死は分かち難く結び付いている……×華は日々妊婦の分娩と胎児の堕胎に立ち会うなかで自分の生き方を見直し、命の尊さを痛感していきます。
そんな主人公の成長が爽やかなヒューマンドラマをぜひご覧ください。
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