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【ルックバック】ネタバレ考察・読んだ感想をレビュー

 

物事を極めるには切磋琢磨するライバルの存在が欠かせません

時に嫉妬すれども励まし合いながら、共に夢に向かって頑張れるパートナーがいれば、どんな試練も乗り越えられますよね。

しかしどんなに信頼できるパートナーとも、ずっと一緒にいられるとは限りません。

やがて人生の岐路に立ち、別の選択をする可能性は十分あります。

その先でパートナーに想像を絶する不幸が降りかかったとしたら……

案内人
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今回は藤本タツキ「ルックバック」を紹介します。

 

 

「ルックバック」あらすじ

物語はある田舎町で幕を開けます。

小学生4年生の藤野は漫画が上手な女の子。学級新聞に四コマ漫画を連載しており、その事を鼻にかけています。

ある日藤野は担任に呼び出され、クラスメイトの京本が学級新聞にイラストを載せたがっているから紙面を割いてくれないかと頼まれます。

「ひきこもりに漫画なんか描けてるんですかね?」と嫌味を言いながらも承諾する藤野。

しかし実際に掲載された京本のイラストは小学生とは思えないほど上手く、藤野は生まれて初めて体験する敗北感にうちのめされます。

以降藤野は打倒京本を目標に漫画の描き方を基礎から猛勉強。友達に遊びに誘われても一切応じず、約二年間をデッサンの修行に費やします。

なのに一向に京本との実力差は縮まらず、天才と凡人の違いを突き付けられました。

小学6年になった藤野は遂に漫画の執筆を断念、学級新聞への掲載をやめます。

そして卒業式の日、担任に卒業証書を渡してくれと頼まれ、渋々京本の家を訪れた藤野が見たものは……。

 

自分の才能に絶対の自信を持つ藤野と、引きこもりの京本。田舎町に住む2人の少女を引き合わせ、結びつけたのは漫画を描くことへのひたむきな思いだった。月日は流れても、背中を支えてくれたのはいつだって──。唯一無二の筆致で放つ青春長編読切。      出典:Amazon

 

「ルックバック」登場人物

【藤野】 本作の主人公、初登場時は小学4年生。学級新聞で四コマ漫画を連載しており、絵が上手いことを鼻にかけています。勝気な性格ですぐ調子にのります。

【京本】 藤野のクラスメイトで不登校児。対人恐怖症で消極的な性格。絵がとても上手です。

 

「ルックバック」ネタバレ・感想

「ルックバック」は「チェンソーマン」が爆発的ヒットを飛ばしたジャンプの新鋭・藤本タツキの短編。

本作は非常にメッセージの高い漫画で、実際にあった事件を下敷きにしています。

その事件とは2019年に起きた京都アニメーションへの放火で、一部では藤本タツキが京アニに捧げたレクイエムと言われました。

藤野と京本はライバルにしてパートナーにして師弟関係。藤野は京本のイラストを目の当たりにし、天才が実在する事を悟ります。

京本に比べたら自分など「ちょっと絵が上手いだけの普通の子ども」に過ぎない現実を突き付けられるのです。

そこで挫折していたら話は終わりですが、心底負けず嫌いな藤野は基礎から勉強し直しました。

だからこそ卒業式の日に初めて会った京本が、「ずっと藤野先生のファンでした!」と追いかけてきたのです。

「ルックバック」は藤野と京本の友情を軸にした青春漫画。同時に漫画を愛し、描き続けてきたすべての人々に贈るクリエイター賛歌でもあります。

漫画の連載に数年間を費やしてきた藤野と京本が辿り着いた結末はあまりに切なく、京本に降りかかった理不尽な運命を嘆かずにはいられません。

しかし藤野は京本の想いを無駄にしないためにも、再び歩き出す決断を下すのです。

「チェンソーマン」の尖った作風とはベクトルが異なる新境地に挑んだ本作は、一言でいうと「エモい」です。

藤野と京本のエピソードを重ねる事で双方の心情が丁寧に掘り下げられ、涙なしでは読めない物語となりました。

現在進行形で漫画家をめざしている人や断念した人、さらには漫画を愛している世界中の読者にぜひ読んでほしいです。

タイトルの「ルックバック」は直訳すると「振り返る」ですが、英語では「追憶」も意味します。

辛い事件の記憶を忘れず、されど立ち止まることなくより良いものを作り出していくクリエイターの気概を象徴する、素敵なタイトルだと思いました。

 

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