今回ご紹介するのはアニメ化もされた異色作
林田球「ドロヘドロ」です。
強烈なゴア描写と涎がでそうなグルメ描写を両立させた本作は、残酷なのにとぼけた作風が人気を呼び、広い層に請けいられました
「ドロヘドロ」あらすじ
この世界には魔法使いの実験台にされた人間が住むスラム街・ホールと、魔法使いの世界があります。
魔法使いたちは魔法の煙でドアを出し、そこからホールにワープしてきました。
ホールに暮らす大男・カイマンは記憶喪失。自分をトカゲ頭に変えた魔法使いをさがし、日夜魔法使い狩りに精を出しています。
カイマンの親友・ニカイドウは定食屋「空腹虫」を営む豪快な美女で、彼の魔法使い狩りを手伝ってやっていました。
そんなある日、カイマンは自分をトカゲ頭に変えた魔法使いの手がかりとなる少女を発見。
そこに魔法使い世界を牛耳る煙グループの下っ端・藤田たちが飛び入りし、事態は思いがけない方向に転がり出します。
自分を醜い姿に変えた、憎むべき「魔法使い」を頭からバックリ!! 口の中にもう一人の人間を住まわせた謎の異形の男・カイマン。魔法使いたちに姿を変えられた時に記憶を失い、いまはただ連中を狩る日々を過ごしている。「口の中の男」が犯人を言い当て、元の姿に還れるその日まで…(第1話)
出典:Amazon
著者 林田 球 出版社 小学館 発売日 2018年11月14日
「ドロヘドロ」登場人物
【カイマン】 ホールの路地裏で行き倒れていたトカゲ頭の大男。凄腕のナイフ使いです。自分の本当の名前や過去の記憶を失っています。
【ニカイドウ】 ホールで定食屋「空腹虫」を営む美女。カンフーの達人。カイマンとは自他ともに認める相棒同士です。
【煙】 魔法使いの世界を牛耳る煙ファミリーのボス。すべてのものをキノコに変える凶悪な魔法の使い手です。
「ドロヘドロ」ネタバレ感想
本作はグロとグルメを両立させた異色作。
血と臓物が容赦なく飛び散るゴアな作風を、登場人物たちのとぼけた言動や憎めない性格が緩和しています。
キャラクターは敵味方問わず魅力的。
ニカイドウとカイマンの訳ありバディもさることながら、個人的には煙ファミリーの掃除屋コンビ、心先輩と能井が最高でした。
心臓マスクに黒スーツ、足元はスニーカーで決めた心のファッションは通にはたまりません。
筋骨隆々一撃粉砕の怪力の持ち主・能井も、マスクの下の意外な素顔にギャップ萌えです。
とはいえ恋愛要素は殆どありません。カイマンとニカイドウにしろ心と能井にしろ、互いを憎からず思っている描写こそあれ作中ではっきり描写はされず、だからこそ妄想がはかどります。
女性陣と男性陣のパワーバランスが対等にして絶妙なのも、「ドロヘドロ」を名作たらしめる所以ですね。
バトルシーンは迫力満点。キャラクターの狂気的な表情からビリビリ殺気が伝わってきます。
しかしシリアス一辺倒にはならず、くすりと笑えるギャグがちりばめられているのに注目。煙ファミリーのオンオフの温度差は癖になること間違いなしです。
ニカイドウが焼く大葉ギョーザに丹波社長のミートパイ、煙のキノコ尽くし料理など、毎回の如く食卓を彩る料理は大変おいしそうでお腹がすきました。
本来水と油なグロ描写とグルメ描写を融合させ、他に類を見ない独特の読み心地を生み出す作者の手腕は見事です。
さらには人を生き返らせる魔法使い・キクラゲや「空腹虫」を見守るギョーザの妖精など、キモカワイイマスコットキャラに事欠きません。
魔法や魔法使いの設定も考え抜かれており、「魔法使いの脳には悪魔の形の腫瘍がある」「魔法使いの体内には魔法の煙を出す腺があり、それが指先に繋がっているから煙を出せる」など、きちんと理屈付けされているのが好感触でした。
毎巻末の番外編「魔のおまけ」は煙ファミリーのプライベートやホールの日常が覗けるのでファン必見。
どんなキャラクターにも不思議と愛着が湧いてしまうのは、「ドロヘドロ」のカオスな魅力がなせるわざでしょうか。
カイマンの素性に纏わる伏線回収も素晴らしく、完全に意表を突く正体にあっと驚かされました。
本編は完結済みですがアニメ二期の制作も決定しており、またカイマンたちに会えるのが楽しみでなりません。
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