私達が住む世界には多種多様な生物が存在します。
同じ肌、同じ色の人間同士でも理解し合うのは簡単なことではありません。ましてや自分と違った相手を尊重するのは難しいものです。
今回は板垣巴留「BEASTARS」をご紹介します
「BEASTARS」あらすじ
この世界には肉食獣と草食獣が存在します。
表向き共存している両種族ですが、水面下では肉食獣による草食獣の食殺事件が後を絶たず、偏見・差別・対立など現代社会にも通じる多くの課題を抱えていました。
名門私立チェリートン学園高等部のレゴシはハイイロオオカミで演劇部所属の裏方。
見た目と違って穏やかで優しい気性ながら、草食獣には誤解されることが多いです。
ある日演劇部のアルパカ・テムが食殺される事件が発生、学園内に犯人が潜んでいるのではと皆が疑心暗鬼に陥ります。
そんな中演劇部の部長であるルイは新入生歓迎会で上演する劇の稽古に熱中。
部活動で遅くなったレゴシはドワーフウサギの女生徒・ハルと偶然行き会い、肉食獣の本能に負けて襲ってしまいました……。
肉食獣と草食獣が共存する世界。そこには、希望も恋も不安もいっぱいあるんだ。 チェリートン学園の演劇部員レゴシは、狼なのにとっても繊細。 そんな彼が多くの動物たちと青春していく動物群像劇!!
出典:Amazon
著者 板垣 巴留 出版社 秋田書店 発売日 2017年1月6日
「BEASTARS」登場人物
【レゴシ】 私立チェリートン学園高等部の生徒。穏やかで大人しい気性のハイイロオオカミ。周囲には変わり者と見なされています。
【ルイ】 私立チェリートン学園高等部の生徒でレゴシの先輩。カリスマ的な人望を誇るアカシカで、次代のビースターを目指しています。
【ハル】 私立チェリートン学園高等部の女生徒で園芸部。レゴシに襲われて怪我を負いました。不純異性交遊の常習犯です。
「BEASTARS」ネタバレ感想
作者の板垣巴留は「バキ」シリーズで有名な板垣恵介の娘。
連載スタートからしばらくはその事実を伏せていたものの途中で公表、父親とともに少年チャンピオンの誌面を賑わします。
本作のキャラクターは擬人化した動物たち。
主人公のレゴシは肉食獣のハイイロオオカミ、ヒロインのハルは草食獣の可憐なうさぎです。両者には性別の違いだけでなく、種族や体格など様々な違いが存在しました。
初対面のハルを肉食獣の本能に負けて襲ってしまったレゴシは、その事に対しずっと負い目を持っています。故にハルへの感情が食欲なのか性欲なのか見極めきれず苦悩し続けました。
この二人が徐々に互いを理解し距離を縮めていく様子が大変じれったく初々しく、甘酸っぱい青春を楽しめました。
他にも学園のカリスマ・ルイや物語後半に登場する殺獣鬼・メロンなど、魅力的なキャラクターには事欠きません。
肉食獣と草食獣を巡る諸問題は、私たちが生きるこの社会で現実に起きている人種差別を連想させます。
肉食獣というだけで草食獣に警戒されるレゴシ。草食獣であるが故に常に怯え続けなければならないハル。
両方の視点で物語が進行する為、読者はどちらにも等しく感情移入し、その立場を理解することができます。相手の立場を慮る想像力を養えるのです。
かといって草食獣が可哀想な被害者、守ってあげなきゃいけない弱者として描かれてないのもポイント。
ルイにしろハルにしろ、むしろ精神力ではレゴシを上回っています。そんな二人にリードされ成長していくレゴシには感動しました。
肉食獣に力で劣る草食獣ながらビースターの座を目指す野心家・ルイとレゴシの友情も本先の大きな見所。
二人そろってビースターになると誓いを立てる事で、「BEASTARS」のタイトル回収がされる構成は見事でした。
不遇な生い立ちからくるコンプレックスをはねのけて、成り上がっていく彼の姿には勇気をもらえました。
肉食獣と草食獣の混血であり、どちらのグループにも属せないメロンの孤独も胸を打ちます。
本作はスピンオフも刊行されており、そちらでも様々な悩みが描かれています。一部登場人物も共通しているので、一緒に読んだら倍楽しめること間違いなし。
ぜひともレゴシたちの生き様を目に焼き付けてください。
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