最近は結婚の形も様々。必ずしも籍を入れる事を重視せず、マイペースに交際している恋人たちも増えてきました
本作「夏目アラタの結婚」は、まるで結婚願望を持てなかった児童相談所のアラサー職員が、何故かシリアルキラーと獄中結婚する羽目になってしまうお話です。
打算から始まった関係に真実の愛は生まれるのでしょうか?
「夏目アラタの結婚」あらすじ
主人公は児童相談所のアラサー職員・夏目アラタ。直情的な性格で、子供が絡んだ問題にはカッとしやすいのが玉に瑕です。
複雑な家庭環境で育ったアラタはさっぱり結婚願望を持てず、一生独身でいいと割り切っていました。
そんな中、彼の担当児童・卓斗がシリアルキラー・品川真珠と文通していることが発覚。
卓斗の父親は真珠の犠牲者であり、その遺体の一部はまだ見付かっていません。
卓斗に身代わりで面会を頼まれたアラタは渋々承諾、真珠に会いに行って驚きます。
実際の真珠は醜く太った新聞の挿絵と違い、スリムでボーイッシュな美少女でした。
アクリルガラス越しの逢瀬を重ねるうちにアラタと真珠は急接近、ひょんなことから獄中結婚に踏み切るのですが……。
これは、最も一線を越える「結婚」!児童相談所に勤務する夏目アラタは、結婚に夢など抱いていない30代・独身。彼はある日、担当児童・卓斗から「父を殺した犯人に代わりに会って欲しい」という依頼を受ける。犯人の名は品川真珠。【品川ピエロ】と呼ばれる有名連続殺人犯だった…!!
出典:Amazon
著者 乃木坂太郎 出版社 小学館 発売日 2019年11月29日
「夏目アラタの結婚」登場人物
【夏目アラタ】アラサー児童相談所職員。虐待やネグレクトなど、子どもが絡んだ問題に熱くなりやすい傾向があります。
【品川真珠】品川ピエロの異名をとるシリアルキラー。連続バラバラ殺人の犯人として刑務所に収監されています。
「夏目アラタの結婚」ネタバレ感想
「夏目アラタの結婚」は「医龍」「幽霊塔」でヒットを飛ばした乃木坂太郎の新たな代表作にして傑作サスペンス。
テーマは獄中結婚で、ヒロイン・真珠のエキセントリックなキャラクターが際立っています。
本作で注目してほしいのはシリアルキラーと児童相談所職員、アクリルガラスを隔てた二人の手に汗握る駆け引き。
真珠の発言はどれがブラフで本音かわからず、アラタは翻弄されます。
あどけない少女めいた振る舞いをしたかと思いきや、次の瞬間には狂気的な表情を覗かせる真珠にぞくぞくしました。
一方のアラタも負けておらず、真珠の信頼を勝ち取る為にハッタリをかまし、あるいは男らしい誠意を見せます。
そうしているうちに心が通い合い、恋愛感情に似た何かが生まれていく様から目が離せません。
ストーリーも二転三転し、毎回の如く読者の意表を突くどんでん返しが仕掛けられています。
真珠の真意はどこにあるのか、本当は冤罪ではないのか疑問は尽きず、読者もアラタと一緒になって真珠に振り回される快感を味わえるのがポイント。
真珠を警戒する理性と惹かれていく本能の狭間で葛藤するアラタに、自然と感情移入してしまいました。
児童相談所職員としての知識や経験がきちんと生かされているのも評価したいです。
法廷劇としての完成度も高く、エンタメのお手本のようなカタルシスに浸れます。
「夏目アラタの結婚」見どころ
本作のヒロイン・真珠は大変魅力的に描かれており、人殺しでも構わないから結婚したい!と魔がさす男性陣を責められません。
むしろ人殺しだからこそ、男を食い殺す危険さに引き付けられるのでしょうか。
最新刊では真珠の衝撃的な秘密が明らかになり、アラタとの関係が劇的に変化します。
アクリルガラスに隔てた二人の間に生まれるのは愛なのか、あるいは同情と依存の相互作用か、裁判と平行して移り変わる関係性が物語に深みを与え、切ないすれ違いのドラマを盛り上げていました。
個人的にはぜひ実写化してほしい漫画です。
アラタの同僚モモちゃんや真珠の無実を信じる弁護士など脇を固めるキャラクターも濃く、シリアスとギャグの緩急を絶妙に調整してくれていました。
はたしてアラタと真珠は結ばれるのでしょうか?一筋縄ではいかない男と女の結末を見届けてください。
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