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【黒い家】あらすじ・ネタバレ、小説を読んだ感想をレビュー

 

案内人
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幽霊と人間、本当に恐ろしいのはどちらでしょうか?

読者によって意見は分かれますが、人間の欲や悪意の業の深さは、時として幽霊など比べ物にならない恐怖を与えてくれます

今回は貴志祐介が世に送り出したサイコホラーの金字塔、「黒い家」をご紹介します。

 

 

「黒い家」あらすじ

主人公の若槻慎二は保険会社に勤める少し優柔不断な青年です。

彼は黒沢恵と交際しており、一癖も二癖もある顧客の対応に追われながらもそれなりに充実した日々を過ごしていました。

ある日職場に一本の電話がかかってきます。

それは要注意人物・菰田重徳からで、彼の自宅に出向いた若槻は少年の首吊り死体を発見しました。

自殺していたのは菰田の妻・幸子の連れ子の和也でした。

その後菰田は早く和也の保険金を払えと若槻に詰め寄り、保険会社の面々を手こずらせます。

後日菰田が自傷を重ねて保険金を請求する悪質な顧客だと判明。

若槻は菰田が和也を殺したのではと疑いを持ち、幸子に警戒を促す手紙を送ります。

この手紙を皮切りに若槻の周囲ではトラブルが相次ぎ、ストーカーに豹変した幸子が行く先々に付いて回るようになりました。

和也の死は自殺と他殺どちらなのでしょうか?菰田夫妻の過去を調べ始めた若槻を待ち受けていたのは、あまりにおぞましい真実でした。

 

若槻慎二は、生命保険会社の京都支社で保険金の支払い査定に忙殺されていた。ある日、顧客の家に呼び出され、期せずして子供の首吊り死体の第一発見者になってしまう。ほどなく死亡保険金が請求されるが、顧客の不審な態度から他殺を確信していた若槻は、独自調査に乗り出す。信じられない悪夢が待ち受けていることも知らずに…。恐怖の連続、桁外れのサスペンス。読者を未だ曾てない戦慄の境地へと導く衝撃のノンストップ長編。第4回日本ホラー小説大賞大賞受賞作。

(「BOOK」データベースより)

 

「黒い家」ネタバレ感想

「黒い家」を一躍有名にしたのは1999年公開の映画です。キャッチコピーは「この人間には心がない」。まさにその通りでした。

本作の主人公・若槻が不運にして関わってしまうのは、下手な幽霊より厄介で恐ろしいサイコパス夫婦でした。

妻の幸子は保険金殺人の常習犯。金の為なら夫や我が子すら手にかけ、まるで後悔していません。

掴み所ない言動を繰り返していた幸子の異常行動が加速度的にエスカレートし、若槻を追い詰めていく展開は鳥肌モノ。遂には恋人の恵やその恩師にまで魔の手が伸び、完全に日常を破壊します。

しかし最も怖いのは、本作で語られる事件が実際に起きていることかもしれません。

障がい保険金めあてに自傷を繰り返す者や、保険金欲しさに配偶者や子どもを殺す人間は確かに実在するのです。人間の欲には本当に底がないと痛感しました。

幸子のグロテスク極まる存在感には人間の本質的な醜悪さが凝縮されています。

彼女をそういうふうに作り上げてしまった過去に同情こそすれ、筆舌尽くしがたい鬼畜な所業の数々は到底許せません。

とはいえ誰でも幸子になりかねない危険を孕んでいるのは覚えておきたいです。

生理的嫌悪を催す描写も多く、読みながら「もうやめてくれ!」と叫びたくなります。特に「黒い家」潜入以降の展開は貴志祐介の筆が冴えまくっていました。

ヒトコワやイヤミス好きなら必ず満足できる究極のサイコホラー、ぜひご覧になってください。

 

「黒い家」見どころ

「黒い家」映画と原作、どちらが怖いか比べてみるのも一興ですね。

本作の主人公・若槻は保険会社の社員であり、その職種特有のトラブルも克明に描かれています。

幸子の極端な人物造形に心底慄いた後は、実際の事件をあれこれ調べてみてもいいかもしれません。

世間には彼女のような怪物が案外多いことに気付かされます。関わってしまえば最後、骨の髄までしゃぶり尽くされるのでしょうか。

終盤は殆どターミネーターと化してどこまでも追いかけてくるので、若槻ならずとも震え上がること確実。日常に潜んだサイコパスの脅威が身に沁みました。

相手が幽霊ならお札や神社仏閣を頼って祓えますが、理屈や常識が通じない生身の人間には自力で対処するしかありません。

故に若槻と幸子の直接対決では最高のスリルとカタルシスが味わえました。

保険金制度の意外な仕組みや暴力団との関わりも学べるので、世界の裏側を覗きたい人におすすめです。

 

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